VR業界のプラットフォーム覇権争いの行方

VR業界の覇権争いで鍵を握るポイントは、ハードウェアではなくソフトウェアにあります。
どんなに高性能なハードを作っても、低価格のハードを作っても、将来的にハードで差別化をしていくのは難しく、プラットフォームを作り如何にネットワーク外部性を効かせられるかが勝負になります。
PCではWindowsとmacOS、スマホではAndroidとiOSがほぼ独占状態にありますが、VRでは現在多くの巨大企業がこのプラットフォームレイヤーを狙いしのぎを削っています。

※ここで言うプラットフォームとは、OSとほぼ同義ですがPCやスマホがVRと異なる点として、OSの上に乗るプラットフォームがOSのような役割になるというところです。例えばDaydream HomeはAndroid上で動くプラットフォームです。

参考までに現在、VR HMDは下図のように分類されます。

vr-hmd-map

一方、それぞれのデバイスのプラットフォームはこのようになっています。

vr-platform

Oculusの買収で業界をリードするFacebook

OculusはGearVRとRift、さらにはスタンドアローン型のHMDでユーザーを獲得しつつOculus Homeというプラットフォームを成長させていく戦略です。
将来、主力となるVR HMDがコンソール機ベースなのかスマホベースなのかスタンドアローンなのかまだ予測が難しいところですが、Oculusとしては何が主力となるかわからないからこその全張りという戦略かと思われます。
Oculusは現状だと優れたVR体験を提供するハードウエアの会社というイメージが強いですが、彼らの本質的な強みはFacebookと連携するソーシャルグラフにあります。Oculus ConnectのデモではソーシャルVRを全面に押し出していましたが、Oculus Homeにのみソーシャルグラフを閉じるのか、他OSにもソーシャルグラフを解放するのかが戦略上重要なポイントになりそうです。
VRにおけるソーシャル性は非常に重要な要素であることに疑いの余地はなく、プラットフォームの差別化を作り優位性を高めるのであればOculus Homeでのみソーシャルグラフを活用可能にするべきかもしれませんが、Daydream、AppleVR(仮)と今後プラットフォームが分断されるならソーシャルグラフが機能しなくり彼らの強みが失われてしまいます。
Oculus Connectではアバター機能を提供する「Oculus Avatars」、ボイスチャット機能を提供する「Oculus Parties」、マルチプレイのロビー機能を提供する「Oculus Rooms」というソーシャルVRを構成するアプリが発表されましたが、これらは単にOculus Home上のアプリなのか、他プラットフォームにも同様に提供するアプリなのか、Oculus Homeに統合されていくのか、または各機能を使えるSDKを開発者に提供してプラットフォーム横断でソーシャルVRを押し出すのか、まだその戦略は明らかになっていません。AvatarsはSDKが配布されるようですが、しばらくはOculusのプラットフォーム上でしか使えないものでしょう。
VRはソーシャル性が組み合わさることで真価を発揮するので、Facebookにはプラットフォーマーとしての戦いにこだわらずに業界の発展を選択して欲しいところです。。

Daydream VS Oculus

一方Googleもスタンドアローン型を開発しているという噂がありますが、今はDaydreamでスマホベースのHMDを主力としています。彼らの強みは明確で、Androidという巨大なプラットフォームを持っていることにあります。現状最も成長が期待できるスマホベースのHMDでは、いくら他のメーカーが頑張っても根幹を握っているGoogleに勝つのはApple以外にはほとんど不可能です。
ただし、OculusがSamsungと共同でGearVR開発という一手が大きく効いています。スマホベースのVRでは、ハードウェアにシビアなスペックが要求されますが、ハイエンドのAndroidで圧倒的シェアを持つSamsungのGalaxyシリーズがDaydreamに対応せずOculusと独占であれば、Google(とApple)に唯一対抗出来る可能性があります。
さらに、GearVRがGalaxyだけではなく、他メーカーも対応端末の制作が可能であればDaydreamより普及する可能性がうんと高まりますが、この辺りはハードウエア的に難しいのかソフトウエア的に難しいのか戦略的にExclusiveにしているのか、ちょっとわからないところです。
Daydream対応Androidを開発しているハードウエアメーカー一覧にSamsungの名前もあるため、SamsungはDaydream/Oculus両対応のGalaxyを出してくる可能性も高そうですが、もしそうなるとOculusはスマホベースのHMDで厳しい立場に置かれるでしょう。

ハイエンドVRの雄、SteamVRとPlayStationVRの行方

HTCを含めSteam勢は難しい状況です。Steamは確かに巨大プラットフォームですが、主戦場になるであろうモバイル領域では存在感ゼロです。VIVEのハードウエアは素晴らしいもので、現状は最も高品質な体験が可能ですが、前述のとおり現在売りにしているルームスケールも専用コントローラーもすぐに差別化にはならなくなるでしょう。
その点でスマホ装着型をSamsungと組み、さらにスタンドアローンも準備しているOculusの戦略は慧眼でした。Galaxyの爆発事件さえなければ。。。
PCベースのVRはベストな体験が可能とはいえ、スマホベースとスタンドアローンよりも普及させるのは難しく、スマホではDaydreamとOculusに勝つのは限りなく難しいので、ハイエンドなスタンドアローン端末を発売し存在感を出して欲しいところです。
SonyのPlayStationVRはハイエンドで一定の成功を収めるとは思いますが、モバイル領域をどう攻めるのか難しいところです。取りうる戦略は2つでXperiaをDaydreamに対応させるのか、PlayStationVRのプラットフォームを活用するのかですが、これはまだわかりません。現状はDaydreamのパートナー企業にSONYの名前がなかったため、後者の可能性が高いと推測しています。

2017年登場予定のHMDについて

最後に今後登場するMicrosoft/Intel/QualcommのHMDについても触れておきます。
IntelとQualcommはスタンドアローン型のリファレンス機を発表し、それをベースにパートナー企業に独自HMDを開発してもらうというOEM型のビジネスモデルですが、彼らは単純に自社のチップやセンサーを使ってHDMを作ってもらうことで売上をあげるためにリファレンス機を作ったと考えるのが妥当でしょう。独自プラットフォームを構築することはないかと思います。
MicrosoftはWindows10をベースにした「Windows Holographic VR」でDELL/HP/AcerなどPCハードメーカーにHMDを開発してもらう、昔から得意なプラットフォーマーとしての戦いをしています。彼らはMR分野でも同様に「Windows Holographic」をパートナー企業に公開し、HololensのようなMRデバイスの構築を後押ししています。FacebookやGoogleと比べると少し出遅れ感はありますが、Windowsというプラットフォームをどう活用するのか要注目です。